民法から考える「文章を速く読むためのたった一つのコツ」

中尾です。大阪は大雨です。こんなに沢山の雨が降るのは、久し振り、、。

 

仕事柄、すなわち弁護士業とコンサルタント業に従事していると、相対的に多くの資料と文献に目を通す必要が生まれます。質の高い情報をより多く仕入れる必要がありますので、限られた時間の中で効率的に沢山のテキストを読み込む必要があるのです。

 

人によっては、文章の最初から最後までを順番どおりに読みすすめる人もいると思いますが、それではどうしても時間がかかってしまいます。ましてや、自分が初めて触れるような分野の内容であれば、途中で心が折れることすらあるでしょう。

 

これは、別に読書に限った話ではないのですが、何事も、全体構造を把握することが大切です。

 

私はよく「民法」という法律に例えて説明するのですが、民法という法律は、まず最初に「総則」すなわち民法の全ての分野において共通する総論的な条文が並べられています。民法を勉強したことがある人なら分かると思うのですが、「信義則」といった民法全体において意識すべき概念も、この総則部分において登場します。

 

民法は、本当に論理的に作られた条文構造となっており、全ての分野に共通する要素を総則部分として一番冒頭に整理して並べているわけです。つまり、共通して使える概念を先に全て並べておいて、その後、俗に言う「各論」という部分において、個別具体的なケースを想定した条文を並べているわけです。

 

このように、民法は非常に論理的な構造をしているのですが、その頭から、すなわち総則部分から読み進めると、いわゆる抽象論とも言うべき部分ですので、特に初心者には理解することが難しいという問題が生じてしまいます。

 

要するに、売買契約のような日常生活中においても馴染み深い契約類型について学ぼうとしても、民法の後ろの方にしか記載が無いということです。民法の頭から読み進めてしまうと、一番馴染みの深い売買契約に関する条文まで、辿り着かない。途中で、心が折れてしまう、ということです。

 

ここまでは民法を例に説明しましたが、民法や法律に限らず、およそ全ての文字媒体について、全体構造の把握が鍵となるということが分かるでしょう。

 

つまり、文章の頭から読み進めるのではなく、まずは意味が理解できなくても、速いスピードで最後まで目を通してしまうことが有用なのです。

 

速いスピードといっても個人差があるでしょうが、個人的には、およそ一切の内容を理解できないようなスピードで最後まで頁をめくるといったイメージで良いと思っています。とりあえず、最後まで、ザッと全てのページをめくる。ブログやメルマガであれば、最後までスクロールして、目を通す。本当に、目を通すだけでよいのです。意味を理解しようとせず、ただ形式的に視覚によりスキャニングするような感覚です。

 

このような感覚は、何度か訓練しているうちに、身につくと思います。ページをめくるスピードについて、自身にとってしっくりとくる感覚を得られる瞬間があると思います。

 

試験問題を解く際にも、同じような手順で挑むべきです。

 

頭から問題文を読み進めるのではなく、まずは問題用紙の全てにザッと目を通す。本文を精読する前に設例にまで目を通す。大問がどれぐらいあるのか、小問がどれぐらいあるのか、記号問題があるのか無いのか、このあたりを「無意識的に」頭の中にインプットすることが目的です。

 

人間の頭は、無意識に、色々なことを処理しています。

 

池谷裕二氏の本は、いくつも出版されていますが、どの本も非常に読みやすいです。

 

視覚を通じて頭の中に入ったものは、自分の意識とは無関係に、自分の行動の基礎となるものであるというのが、私の理解です。「直感」というのもまさにこの命題から導かれるものであると思っています。無意識に判断しているつもりでも、実は、根拠があるはずだ、ということです。

 

「理解しよう」と意識するからこそ、逆に理解が遅れるということすらあるでしょう。要するに、気持ち、すなわち心が頭にブレーキをかけてしまっている状態です。

 

「理解できるまで次に進まない」という姿勢こそが、速読を妨げる一番の要因になっているのだと思います。

 

「理解できなくてもとにかく前に進む」という姿勢こそが、結果的に、理解への一番の近道であるとすら言えそうです。

 

まずは、理解できなくても、文書全体の最後までをとてつもないスピードでスキャニングする。そうすることにより、無意識下において、全体構造の把握をすることができる。全体構造の把握さえできれば、メリハリをつけた読書が可能となる。このメリハリをつけた読書すらも、無意識に行われるものであるということを理解する。

 

もしも、頭から順番に読み進めるといった読解法しか行ったことがない人は、一度、騙されたと思って、ここまでに書いてきたことを実践してみて下さい。

 

なお、速読による勉強法について複数の書籍を書いている「椋木修三」という人がいます。私は、この人の本から、多大なる影響を受けました。この人の本を読んだおかげで、各種試験を突破し、何とか仕事もこなせているのだろうと思います。読んで損のない本ばかりです。



中尾慎吾

弁護士/コンサルタント"中尾慎吾"です。契約関係・法律関係の最適化に関心があり、法律顧問の立場から事業活動および私的活動を「的確な法律知識の裏付け」を根拠として適切にコンサルティングしています。 連絡先:shingo.nakao1015@gmail.com

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